最終更新日:2022/03/15

虚血性心疾患

狭心症や心筋梗塞の患者さんに対して、心臓の血流を良くするためにカテーテルの治療などが行われていますが、 種々の理由で手術のほうが望ましいと判断された場合には、冠動脈バイパス術の対象となります。治療の方針は循環器内科とよく協議のうえ決定しています。

冠動脈バイパス術は胸の中の動脈・下肢の静脈などを使用してバイパス手術を行います。当科では以下のことに努力しています。

心拍動下冠動脈バイパス術(人工心肺を使用しない)

冠動脈バイパス術は心臓の表面にある直径2mm前後の細い血管をつなぐ手術であり、かつては人工心肺を使用しながら心臓を停止させて手術を行っていました。
最近では人工心肺を使用しないで心臓が拍動したまま血管をつなぐ手術が多く行われるようになってきています。手術の併発症である術中の脳梗塞を起こす可能性が低いなど、患者さんの肉体的負担が少ない手術であり、術後の回復が早いことが特徴ですが、技術的にはより難しいといわれています。
人工心肺を使う方法と使わない方法、それぞれの方法に長所・短所があり、当科では患者さんごとに最適と思われる方法で行うようにしています。

他の手術を同時に行う

他の病気で手術が必要な場合、冠動脈疾患があると麻酔・手術の危険性が高くなり、心臓の治療が先に必要になります。 通常、心臓の治療を先行させた後に他の手術を行いますが、冠動脈バイパス術を同時に行うことによって、2回に分けて手術を行うより患者さんの肉体的・精神的負担を軽くすることができます。
腹部大動脈瘤などに積極的に同時手術を行っています。

冠動脈バイパス術後のCT

弁膜症

心臓の中にある弁が狭くなって血液の流れが悪くなったり(狭窄症)、弁の閉じ方が悪くなって逆流を起こしたり(閉鎖不全症)すると、心臓に負担がかかり心不全を起こす原因になります。
心不全が起こりにくくするように、ある程度薬でコントロールはできますが、狭くなったり逆流を起こしていること自体は薬では直らず、程度がひどければ手術が必要です。心臓の出口にある大動脈弁は自分の弁を残すように手術を行うのは難しく、人工弁に換える弁置換術が一般的です。人工弁のうち、機械弁の耐久性は良好で、最近の弁は機能も良くなっていますが、ワーファリンという血液を固まりにくくする薬が術後一生涯必要です。
一方、牛などから作られた生体弁は、かつては耐久性が疑問視されていましたが、高齢の方はほとんどの方が15年程度は大丈夫なことが明らかになり、70歳以上の方には使用しています。生体弁を使用することによりワーファリンの内服は不要になります。

2015年から、大動脈弁狭窄症に対してカテーテルで大動脈弁移植を行う経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を香川県で初めて導入しました。人工心肺を使用せず、胸を開く必要がないので体の負担が格段に軽くなりますが、特有の合併症もあるため、通常の大動脈弁置換術が危険性が高いと判断された方が対象となります。

左心室の入り口にある僧帽弁については、逆流だけの場合は自分の弁を残し修理する弁形成術を積極的に行っています。弁置換術に比べ、術後ワーファリンが不要・心機能が低下しないなどの利点があります。

小切開心臓手術

弁膜症に対しては症例を選択して患者さんに負担の少ない小切開心臓手術(右小開胸手術または胸骨部分切開)を行っています。

僧帽弁形成術後(肋間切開)
僧帽弁形成術後(肋間切開)
大動脈弁置換術後(胸骨部分切開)
大動脈弁置換術後(胸骨部分切開)

胸部・腹部大動脈瘤

大動脈瘤は通常症状はありませんが、ある一定の大きさになると破裂する危険があり、生命に直結する怖い病気です。時期を逸せずに予防的に治療すれば、比較的安全に治療が可能です。

おおよその治療の目安は胸部で5.5 cm、腹部で5.0cmですが、形や拡大速度により早めに治療した方が安全な場合があります。
瘤およびその周囲の血管の状態によって足の付け根からステントグラフト治療が可能な場合も多く、傷が小さく低侵襲で、患者さんにやさしい方法です。

胸部の場合は頸部の血管のバイパスを併用する場合がありますが、人工心肺を使用せずにできるメリットが大です。場所や形態により全例がステントグラフトで治療できるわけではありませんが、瘤の大きさが大きくなりすぎると、破裂の危険もさることながらステントグラフトが困難となる場合が多いため、指摘されれば早めに受診をお勧めします。

※当院では下記写真のごとく、腹部では足の付け根を切開することなく、止血デバイスを用いて穿刺のみで行っています。

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術

急性大動脈解離に対する治療

大動脈解離は、大動脈の内面の壁が急にはがれることによってさまざまな障害を起こす非常に重篤な緊急性の高い病気で、心臓に近い大動脈に及んだ場合は心臓周囲に出血して圧迫による心停止となる危険性があるため緊急手術を必要とします。安定した成績で緊急手術を行っています。それ以外の大動脈解離では多くの場合、手術は必要なく、血圧を調整して管理致します。

不整脈関連手術

心房細動や心房粗動が弁膜症に合併することがしばしばあります。
その場合、同時に冷凍凝固あるいは電気焼却でブロックラインを作成する(一般にメイズ手術と言われています)ことにより弁膜症手術と同時に行うことが可能です。MICS心臓手術でも可能です。また不整脈が原因となって血栓ができやすい左心耳を閉鎖あるいは切除を同時に行います。

末梢血管手術

閉塞性動脈硬化症などの末梢血管の手術を行っています。
閉塞性動脈硬化症は、下肢に行く動脈がつまったり狭くなったために、歩行するとふくらはぎなどが痛くなるなどの症状が出ます。少し休むとまた歩けるようになりますが、同じような距離を歩くとまた痛くなるというのが特徴的です。つまった部分や狭くなった部分を自家静脈や人工血管でバイパスする手術を行います。
急に血栓が生じたり、心臓などから塞栓が発生して四肢の動脈閉塞を起こすことがあります。一定時間以内に血栓塞栓除去を行う必要があり、緊急手術で対応致します。
また透析患者さんに必要なシャント手術を多数行っており、カテーテル治療が困難なトラブルケースにも対応しています。

その他の手術

心臓腫瘍、一部の成人先天性心疾患などを行います。