最終更新日:2022/03/15

片頭痛の治療について

脳や体に病気がないのに起こる慢性頭痛は、主に片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つのタイプが有名です。 中でも片頭痛は30代から40代の女性の5人に1人が抱える病気で、頭痛により患者さんの生活の質(QOL)が低下するだけでなく、 欠勤や業務効率の低下を招き経済的にも損失が大きい病気と考えられています。

片頭痛には「前兆を伴う片頭痛」と「前兆を伴わない片頭痛」があります。片頭痛の前兆として有名なのは、「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる、 キラキラとした光が見えたり、視野の一部が見にくくなったりする症状です。片頭痛の痛み方の特徴としては、頭の片側がズキズキと脈打つような強い頭痛発作で、痛みは数時間から長い時には3日程度持続します。 体を動かすと頭痛がひどくなることが特徴で、吐き気や、光や音に対する過敏症状を伴うことが多いと言われています。 片頭痛の原因は十分には解明されていませんが、有名な仮説の一つに、三叉神経血管説というものがあります。 この説ではなんらかの刺激により血管に分布する三叉神経が興奮し、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を始めとした血管作動物質が放出され、 これにより血管の拡張が起こり,同時に血管の周囲に炎症が生じ頭痛が発生するというものです。 現在の片頭痛治療薬はこの三叉神経血管説に注目して開発されているようです。

片頭痛の治療には、頭痛発作が生じたときに行う「発作時の治療」と発作の回数を減らしたり発作の程度を軽くしたりするために行う「予防治療」に分けて考えます。 いずれの場合もストレッチや運動・生活習慣など薬物以外の要素が重要であることは言うまでもありませんが、ここでは病院で行う薬物治療の話題だけをとりあげます。
片頭痛発作に対しては、アセトアミノフェンや非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)が最もよく使われています。NSAIDsは市販薬の種類も多いので、 自分にあった市販薬を見つけて頭痛とうまく付き合っている患者さんも多くみられます。これらの薬剤で効果不十分な場合は、病院で処方されるトリプタン製剤を使用します。 トリプタン製剤では吐き気が強くて薬を飲むことができなくなる患者さんには注射薬や点鼻薬も選ぶことができます。

頭痛の頻度が多い場合や発作の程度が重い場合は、片頭痛の予防治療を行います。 片頭痛の予防薬としては血管の収縮を抑えるカルシウム拮抗薬やβ遮断薬が有効な場合や一部の抗てんかん薬が有効な場合があります。 2021年には片頭痛の発症に関与していると考えられているCGRPやCGRP受容体を選択的に阻害する抗体製剤が発売され、 これまでの片頭痛予防薬で効果が十分でなかった患者さんの治療において成果をあげています。

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