最終更新日:2022/03/15

麻酔について

手術の時に受ける麻酔には、局所麻酔から全身麻酔までいろいろな麻酔の方法があります。

患者さんひとりひとりの状態や受ける手術に応じて、麻酔科医が執刀医とも相談しながら、麻酔を選択し組み合わせ、手術によるストレスを最小限にします。

当科で行っている麻酔の方法は全身麻酔(吸入麻酔・静脈麻酔)、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔、伝達麻酔(神経ブロック)、局所麻酔です。

手術を受ける間は、痛みはないことはもちろんですが、意識があるかないかということも心配される方がおられると思います。

麻酔は大ざっぱに分けると、深い眠り(医学上では鎮静・鎮痛・無動の状態)である全身麻酔と、意識がしっかりあるか軽い眠り(鎮静・鎮痛の状態)であるそれ以外の麻酔に分けられます。

全身麻酔以外の麻酔は鎮痛のために全身麻酔に併用することで、術後すぐの痛みを抑えることもできます。

このように各患者さんに応じて、麻酔が選択され、組み合わせられています。

各麻酔法の特徴を以下に簡単にご説明しますが、手術前に麻酔科医師が直接行き、麻酔の説明をいたしますので、疑問点や不安な点があればお尋ねください。

また、その折には安全の為にいくつか確認したいことがありますので、どうぞご協力ください。

脊髄くも膜下麻酔とは

下半身麻酔、腰椎麻酔とも呼ばれています。背骨の中には脳から繋がる脊髄という太い神経があり、くも膜と硬膜に包まれて、脳脊髄液に浸かっています。脊髄は枝分かれしながら頭から足の方へ走っており、最後は腰のあたりで馬の尻尾のようになっています。

脊髄を傷つけないために、腰の下の方に麻酔専用の細い針を刺して、少量の局所麻酔薬を入れます。すると脊髄からでる神経の働きを一時的にブロックすることのより、下半身が麻酔されて、手術を行うことができます。麻酔をするときは背骨の隙間が広がるように横向きで丸くなって寝てもらいます。皮膚を消毒した後、腰に注射します。麻酔が効いてくるとポカポカと下半身から暖かくなって、痛みを感じなくなってきます。麻酔科医が冷たさの感覚など、手術に必要なところまで麻酔が効いていることを確認してから、手術が始まります。麻酔の効果が不十分であれば、再度注射をしたり、点滴から痛み止めを使ったり、全身麻酔に変更します。麻酔が効いている部分には痛みはありませんが、皮膚にものが触った感覚が残っていることもあります。手術中に意識がある麻酔ですので、困ったことがあれば担当麻酔科医にご相談ください。

硬膜外麻酔とは

脊髄の入っている硬膜の外側には、硬膜外腔というスポンジ状の部分があります。ここに硬膜外カテーテル(非常に細いチューブ)をいれ、そのカテーテルを通して局所麻酔薬をいれることで、神経の広がりに沿って部分的に痛みを取ることができます。全身麻酔あるいは脊髄くも膜下麻酔に併用して手術中、手術後の痛み止めとして使用されます。

麻酔をするときは背骨の隙間が広がるように横向きで丸くなって寝てもらいます。皮膚を消毒した後、腰に痛み止めの注射をし、硬膜外麻酔専用の針を刺して、カテーテルを入れます。カテーテルの先には痛み止めの入ったボトル(入れ物)がつながっています。手術や患者さんに応じて、鎮痛部位や痛み止めの量や種類を調整しており、術後の痛みが楽になります。

ただし、お薬や体質で血が止まりにくい状態の方や感染をおこしやすい状態の方は、合併症の可能性が高くなりますので硬膜外麻酔は避けた方がいいとされています。その場合は術後の痛み止めとして別の方法を用いるようになります。

全身麻酔とは

点滴かマスク吸入のどちらからか、全身麻酔薬を用いて痛みを感じない深い眠りの状態にし、その間に手術を行う方法です。全身麻酔中は、呼吸と循環を助ける必要がある為、麻酔科医が必要に応じてお薬の量を調整したり、呼吸のための気管チューブを口から入れ、人口呼吸をおこなったりします。手術終了後には、麻酔薬を中止して目が覚めるのを待ち、それから呼びかけますので、目を開けたり、手を握ったりして、目が覚めていることを伝えてください。口の中のチューブは、手を握る力や呼吸を確認してから、気管や口の中をきれいに吸引して抜きます。目覚めた直後で、まだ麻酔が残っているので、記憶がないことも多く、苦痛に感じることもほとんどありません。その後、目がしっかり覚めているか、血圧や脈拍や呼吸が安定しているかを、麻酔科医が確認してから手術室をでるようになります。

末梢神経ブロック(伝達麻酔)とは

超音波装置(エコー)で神経を見ながら、脊髄よりも末梢で痛みを感じる経路をブロックして、痛みを感じなくします。

エコーで神経を確認しながら局所麻酔薬を入れられるため、昔よりも安全にブロックできるようになり、手術後の痛み止めとして全身麻酔に併用することも多くなりました。硬膜外麻酔よりも末梢よりも末梢の神経で行うブロックなので、ブロックしたい神経を選んで行うことができます。(腕神経叢ブロック、腹横筋膜面ブロック、大腿神経ブロック、閉鎖神経ブロック、坐骨神経ブロックなど)。手術によってはカテーテルを入れることによって長時間の痛み止め可能です。付け根にある腕神経叢を麻酔し、腕全体を痛みを感じなくすることができます。おこりうる偶発合併症としては、神経損傷(針やカテーテルによる直接損傷)、出血や血腫による神経圧迫、局所感染、局所麻酔薬中毒などがあります。またブロックを行う部位によって気胸、腹腔内穿刺などがあります。近年、エコーで神経を見ながらブロックを行えるようになったため、穿刺手技による合併症の確率は非常に低くなっています。

局所麻酔とは

痛みを伴う処置(切開、縫合など)を行う部分に麻酔を行う方法です。局所麻酔薬を処置を行う部位に注射します。

手術前後(周術期)について

手術医療は、手術室に限られたものではなく術前から術後まで、各診療科の医師、麻酔科医師、手術室看護師、臨床工学技師、薬剤師など、チーム医療として各所と連携しながら、ひとりひとりの患者さんのために取り組まれています。

手術前(手術前日~数日前)には麻酔科医師、麻酔研修医、看護師が手術室より患者さんを訪問します。この時に、麻酔科医師より問診・診察があり、手術・麻酔の流れや手術前の注意点(絶食・水分制限・当日の内服薬など)について説明させていただいています。麻酔中、嘔吐して誤嚥することがないように、固形物の中止と、水分の中止をお願いしています。患者さんによって絶飲食の時刻が違う事がありますので、手術前日までに訪室する担当麻酔科医師に必ず確認ください。また、麻酔に関しての疑問や不安な点があればどうぞお尋ねください。

集中治療について

集中治療室(ICU)は重大な疾患を抱えている患者さんを24時間監視し、いろいろな最新の医療機器を使用し、救命するための部門です。

心臓、肺、脳、肝臓、腎臓などの重要臓器の機能不全(多臓器不全)をきたす疾患、外傷、大手術後、熱傷などがその治療対象となります。

集中治療室では、24時間体制で専任の麻酔科医師と看護師を配置し、様々な最新モニター機器、人工呼吸器、透析装置、IABP・PCPSなどの循環補助装置を活用し、いつ急変するかもしれない重症の患者さんを注意深く観察しながら、治療・救命にあたってます。

新病院では・・・
新病院への移転に伴い、ベット数を8床から10床とし、看護師スタッフも40名に増員いたしました。
ベットが全て個室対応となったことで、プライバシーにも配慮でき、患者さんができるだけ昼夜・時間の経過なども感じられるようになりました。