診療科・部門紹介

診療内容(脳神経外科)

脳血管障害

脳血管障害、脳卒中診療は急性期の的確な病型診断とそれに基づいた迅速な急性期治療が大切です。脳動脈瘤に対するネッククリッピング術やコイル塞栓術、頚動脈狭窄症に対する内膜剥離術やステント留置術、主幹動脈閉塞に対するrt-PA静注療法やカテーテル血行再建、頭蓋内外バイパス術など、病態に応じた幅広い治療選択が行えることが大切で、当院では6名(脳神経外科専門医4名、脳神経血管内治療専門医1名)で診療体制を整えています。

脳卒中 stroke とは、脳の血管が急激に異常に陥る、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血の3つの疾患の総称です。 脳梗塞は脳の血管が詰まって起こります。脳出血とクモ膜下出血は脳の血管が破れて起こります。

ともに、突然、意識や体の動きに不調が生じます。発症してから治療までに緊急を要する疾患です

脳梗塞

脳梗塞 cerebral infarction とは、脳の血管が狭くなったり詰まったりして、脳に血流が行かなくなり、脳の組織が壊死してしまう疾患です。心臓の病気、高血圧、糖尿病、高脂血症などの病気や喫煙の習慣をお持ちの方は、脳梗塞になりやすい、と言われています。

原因は、大きく二つにわけられます。

まず、 脳の動脈自身に問題がおきて狭窄や閉塞をおこすもの。このうち太い動脈に問題を起こすのは主に動脈壁にコレステロールなどが沈着するアテローム血栓症で、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙などが原因となります。細い動脈に問題を起こすのは主に高血圧で、小さな梗塞(ラクナ梗塞)をおこします。 梗塞は小さくても、大切な部位に生ずると強い半身麻痺をきたします。

また、 脳の動脈以外に原因があってそこで血栓(血液が固まったもの)が作られ、血液の流れに乗って運ばれてきて脳の動脈を閉塞する脳塞栓があります。こちらについては、原因が頚部頚動脈にある場合と、心臓にある場合が多くなっています。

原因が頚部頚動脈にある場合は、脳の太い動脈におこるのと同様のアテローム硬化が頚部の頚動脈におこります。 頚動脈の壁にコレステロールが徐々に蓄積され盛り上がって血液の流れを阻害する、と考えるとよいと思います。 アテローマは表面に血栓を形成したり、もろくなってくずれることがあり、破片が血液に流されて脳内に到達し脳の動脈を閉塞します。 原因が心臓にある場合の代表は、心房細動と弁膜症です。 これらがあると動いている心臓の内壁に血栓ができることがあります。 血栓がある程度大きくなって血流で押されて壁からはがれると、動脈内を流れていって脳の動脈を閉塞します。 心原性塞栓症、と言います。 腎臓や足などの動脈を閉塞することもあります。

その他にも、病的な抗体や血中物質などが関係した比較的頻度は少ないが重要な原因が多数あります。 もやもや病による脳梗塞もあります。 これらは専門的な検査を行って診断する必要があります。

<脳梗塞の症状>
脳は部位によって機能がわかれていますので、原因が何であれ、どの部分に脳梗塞ができるかによって、半身麻痺、言語障害、視野障害、行動異常など色々な症状がおきます。脳梗塞によりいったん生じた症状は、多少改善することがあるとしても、基本的には良くならない、もとにはもどらない、といわれています。

<脳梗塞の治療>
発症から4.5時間以内であれば、血栓を強力に溶解するt-PAという静脈注射薬が使用可能な場合があります。t-PAは、このままでは脳梗塞になるかもしれないがまだなってはいない、という時期に注射できれば劇的な改善の可能性があるので、発症からいかに短時間のうちに使用するか、が最も重要です。 脳梗塞が完成してから投与すると、出血をきたして悪化する可能性があります。 実際には、発症から4.5時間を超えた患者さんに使用してはいけないことになっていますが、4.5時間以内なら大丈夫、ということではなく、少しでも早く投与する必要があります。 しかし、この薬は脳梗塞発症後早期に使用すれば劇的な改善が得られることがあるかわりに、脳梗塞が完成してしまってから投与するとかえって出血をきたして患者さんが悪化する可能性がある、という両刃の剣のような特徴を持っています。t-PAを使用可能な病院は限られており、脳卒中に携わる専門的な医師がいることなどの条件があります。 当院を含めそれらの病院では、院内の診断、治療を迅速に行う体制を整えて診療にあたっております。
t-PA静注療法の対象でない患者さんは、脳卒中治療ガイドラインなどを参考にして治療が行われます。 脳梗塞で使用される薬剤は、アテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞に対する抗血小板剤、心原性塞栓に対する抗凝固剤などが主です。 急性期にはアテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞に対するオザグレル、アルガトロバン、主に心原性塞栓に対するヘパリンなどの注射薬が使われることもあります。 エダラボンという脳保護薬はいずれの病型にも使用可能です。 これらの従来から行われてきた治療は、閉塞した部分を再開通させる作用は強くなく、閉塞や閉塞による病状がさらに進行するのを予防する意味合いが大きいといえます。 抗血小板剤も抗凝固剤も、副作用として出血があります。 頻度は必ずしも多くありませんが、高血圧の管理が不十分だと脳出血等をおこしやすくなりますので、注意が必要です。 抜歯や白内障手術では投薬を続けたまま行うことが多くなってきていますが、胸腹部の手術や消化管内視鏡検査等の前には中断する必要があることもあります。 中断すれば脳梗塞再発リスクがやや高くなるという問題があり、出血が問題となる処置を予定している場合は抗血小板剤・抗凝固剤をどうするか相談が必要です。

頚部頚動脈狭窄症

頚部頚動脈狭窄症 carotid artery stenosis とは、頚動脈のうち頸部の部分で動脈狭窄を生じることを言います。 頚部頚動脈狭窄症は、頚動脈の動脈壁に徐々にコレステロールが沈着して壁にコレステロールのふくれ(アテローマ)を形成することで生じます。 この山によって本来血液が流れる内腔が正常径の1/2くらいまで狭くなると、脳梗塞を引き起こす確率が高くなってきます。 これまで脳梗塞をきたしていない60%以上の狭窄の場合、脳梗塞予防の薬物療法を行ったとしても2.7年間で11%に脳梗塞が発生するとされています。

頚部頚動脈狭窄症が症状を出す場合は、アテローマがもろくなってくずれるか、アテローマの周辺にできた血栓がはがれて脳に流されてきて脳動脈を閉塞することによります。 脳動脈を閉塞すると、脳梗塞を起こし、その部位に応じた症状を出します。

脳出血

脳出血 (脳内出血) cerebral hemorrhage, intracranial hemorrhage (ICH) とは、その名の示す通り、脳の表面ではなく内部に出血します。 ほとんどの場合、脳の深部に血流を送る細い動脈が長年の高血圧によって傷み、ついに破れて出血する、というものです。 症状は主に出血の大きさと部位によります。 20~30cc以下の出血では命の危険は通常ありませんが、部位によっては強い半身麻痺、言語障害などをきたします。 これ以上大きくなるとそれらに加えて意識障害も見られるようになり、50~60ccを越えるようなものは場合によっては命にかかわることがあります。

高血圧性脳出血が多いとされていますが、脳出血の原因は、高血圧のほかにもたくさんあります。 高血圧のない比較的若い患者さんの脳出血では脳動静脈奇形、もやもや病、脳動脈瘤などからの出血が原因であることがあり、それらに対する手術が必要となることがあります。 高齢者にはアミロイドが脳動脈に沈着して出血をきたすことがあります。 アルコール摂取が日本酒にして一日平均2~3合を越える人にも脳出血が多いといわれます。

<診断・治療>
診断は主に脳CTによります。 出血が白く描出されます。
治療はまず血圧管理です。 もともと高血圧があるうえに、脳出血直後はさらに血圧が上がりますので、これを降圧する必要があります。 血腫がおよそ30~40ccより大きい場合などには、手術で血腫を取り除くことを考慮します。 しかし手術で効果が期待できるのは一般には意識障害の改善や救命などの意味合いで、麻痺や言語障害の改善効果はあまり大きくありません。 従って、脳梗塞同様、予防が何よりも大切な疾患です。

クモ膜下出血

クモ膜下出血 (くも膜下出血) subarachnoid hemorrhage (SAH) とは、脳をおおうクモ膜の下、脳の表面に広がる出血をいいます。 ほとんどは脳動脈瘤の破裂によっておきるため、しばしば破裂脳動脈瘤ということばと並べて使用されます。(まれに、脳動静脈奇形などの他疾患によるクモ膜下出血もあります。)
クモ膜下出血になると、治療の如何にかかわらず生命にかかわる場合が1/3、死亡まではいかないが治療しても麻痺や言語障害などの障害を残してしまう患者さんが1/3、後遺症がないかごく軽くて社会生活に復帰できるかたが1/3といわれます。

<クモ膜下出血の原因・症状>
クモ膜下出血は脳の表面を走行する主な動脈に動脈瘤ができ、ある時破れて出血することでおきます。 動脈ですからかなりの勢いで出血します。 これが脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血です。実際には出血の程度で症状の程度が異なります。
少量の出血であれば、頭痛、吐き気程度ですみ、意識障害などはありません。 時に自宅でがまんして数日を過ごすうちに症状が良くなってしまい病院を受診しない人もいます。 中くらいの出血になると、頭痛、嘔吐が強くなり、ぐったりした状態や軽い意識障害がみられたりします。 さらに出血が多ければ、無意識な動作はあるものの呼びかけたり揺さぶったりしないと応答には答えない状態になります。 大量出血では頭痛を訴えたか訴えないかのうちに昏睡状態になってしまい、命に関わる状態です。
クモ膜下出血による頭痛は、倒れるほどではなくても、全く突然の激しい頭痛で始まることが非常に特徴的です。 いったん破裂した動脈瘤はどんなに気をつけても20%以上の人に再破裂が起こり、再破裂すると命とりになる確率が高いといわれています。

<クモ膜下出血の検査と治療>
通常直ちに脳CTを行います。 クモ膜下出血の診断がつくと、患者さんの状態が昏睡などの最重症でなければ、クモ膜下出血の原因である脳動脈瘤を見つけるための脳血管撮影もしくは造影CT,MRIを行います。
脳動脈瘤の部位、大きさ、形などを確認し、治療方法を選択します。 脳動脈瘤の治療は、動脈瘤の壁に血液が到達しないようにすることで破裂を予防することであり、方法としては、(1)開頭クリッピング術、(2)血管内瘤内塞栓術、(3)親動脈閉塞術(状態を見てバイパス術を追加)、(4)保存的治療の4つにわけられます。
開頭クリッピング術はもっとも歴史のある治療法です。 全身麻酔下に頭蓋骨に窓をあけ、クモ膜下血腫を除去しながら脳のしわをたどって動脈瘤に到達し、ふくらんでいる動脈瘤を金属製のクリップで閉鎖します。 うまくクリップがかかれば再発等は少ないことがわかっていますので、通常第一選択となります。 しかし、全身麻酔をかける、開頭して脳や脳血管を直接操作する、深部には到達しにくい、などの点で患者さんの状態や動脈瘤によっては勧められないこともあります。
血管内瘤内塞栓術は最近、発展の著しい方法です。 大腿動脈から挿入したカテーテルを動脈内を経由して脳動脈に誘導し、さらにマイクロカテーテルを動脈瘤内に誘導、プラチナ製のコイルで動脈瘤内をつめてしまうものです。 以前は開頭クリッピング術ができない患者さんだけが対象でしたが、対象の範囲が広がりつつあります。 とくに全身状態や脳の状態があまりよくない場合や、脳深部の動脈瘤の場合は血管内手術が有利なことが多くあります。
当院では開頭術、塞栓術両チームが適した方法を検討し方針を提案させていただいております。
また動脈瘤の部位や形によっては、クリッピング術も瘤内塞栓術も困難なことがあります。 この場合は、動脈瘤を作っている元の動脈(親動脈)そのものを動脈瘤ごと閉塞する必要がある場合があります。 この動脈は脳に血液を送るためのものですから、それを閉塞するにあたってはあらかじめ別のルートで脳に血液を供給するためのバイパス術を行っておく必要があることがしばしばあります。
保存的治療は、動脈瘤を手術せずそのままにして血圧コントロールなどで経過をみるもので、上記のいずれの治療も危険が大きいと判断される場合にやむを得ず選択されることがあります。 破裂した動脈瘤は半年以内に50%が再破裂し、その後も年に1%以上の確率で破裂するため、そうしたリスクよりも手術リスクが高い場合の例外的な選択となります。
動脈瘤の処置が無事終わったあとは、脳血管攣縮(れんしゅく)への対処を行います。 脳血管攣縮とは、クモ膜下出血で血腫に触れた脳動脈が数日から2週間ほどのあいだ、徐々に細くなる(攣縮)状態です。 多くの場合7~10日目ころがもっとも攣縮が強い時期になります。高度な攣縮では、その先の脳に十分な血液を供給できず、脳梗塞をきたしてしまいます。 脳血管攣縮による後遺症や死亡は今でもクモ膜下出血で手術をした患者さんの10%前後におきており、脳動脈瘤手術が無事終了したあとの最大の問題となっています。
脳血管攣縮を無事乗り越えると、次は水頭症です。 クモ膜下出血はもともと脳を浮かべる脳脊髄液があったクモ膜下腔に出血するので、脳脊髄液の流れが強く障害されることがあります。 すると脳内の髄液が貯留して脳を圧迫するようになります。 これを水頭症といい、痴呆症状、歩行障害などのほか意識障害がおこることもあります。 治療は、髄液を腹腔に送り腹膜から吸収させるようにするシャント術です。 シャント術が必要になるのはクモ膜下出血の10%前後です。

脳動静脈奇形

脳動静脈奇形 arteriovenous malformation (AVM) は、脳の血管の構造の一部に、生まれつきの異常がある病気の一つです。

正常では脳の動脈は枝分かれを繰り返して徐々に細くなり、細小動脈から毛細血管となって脳組織に分布しています。 そのため、動脈の高い血圧は徐々に分散され、壁の弱い毛細血管や静脈に直接かからないようになっています。 脳動静脈奇形はこの細小動脈から毛細血管を経て細小静脈となるあたりが、先天的に網状の異常血管塊で置き換えられているもの、と言うことができます。 この異常血管は毛細血管に比べれば非常に太いため、高い動脈血圧が分散されずに異常血管網やその先の静脈に負担がかかることになります。

<脳動静脈奇形の症状>
代表的症状の一つはけいれん発作です。 異常血管網を通過する血流は正常脳にくらべて勢いがよいため、異常血管網やその先の静脈は通常パンパンに怒張しています。 そのため、場合によっては脳が圧迫されたりします。 また、本来周辺の正常脳に行くべき動脈血が、流れの抵抗の少ない脳動静脈奇形のほうに流れ、周辺脳の虚血(血流不足)をおこすこともあると言われています。 これらがけいれん発作の原因になることがあります。
脳動静脈奇形の症状としてより重要なのは出血です。 高い動脈圧が異常血管網やその先の静脈にかかるため、血管が破れやすい状態となっており、破れると主に脳出血(まれにクモ膜下出血)をきたします。 脳出血をきたすと、その部位と出血量に応じて半身麻痺、言語障害、視野障害、行動異常などをおこし、大出血になると意識障害が強くなり、生命にかかわることもあります。
出血の確率は、今まで出血したことのない脳動静脈奇形では年間約2%と言われています。 10年間ではx10となり、約20%の患者さんに出血がおこる計算になります。 一度出血したものは再出血の危険が高く、はじめの一年間は10%前後、その後徐々に低下し数年たつと年間2~3%になります。

<脳動静脈奇形の検査>
脳動静脈奇形はけいれんや脳出血後の脳CTやMR検査でみつかるか、軽い頭痛等で脳CTやMR検査をうけて発見されることがほとんどです。 脳CTやMR検査でわかることは普通、脳内になにか異常な病変があるというところまでであり、確定診断には脳血管撮影を行います。 これらの検査を総合して、どのくらいの大きさの脳動静脈奇形が脳のどの部位にあるのかを診断し、どのような治療がふさわしいかを考えます。

<脳動静脈奇形の治療>
治療は、開頭手術で脳動静脈奇形を摘出するか、ガンマナイフを脳動静脈奇形に照射するか、のいずれかと考えてよいと思います。 摘出術では脳動静脈奇形の周囲の脳をある程度いっしょに摘出することになりますので、それを行っても大きな問題が出ない場所であることが条件になります。 周辺の脳が重要な機能を担っているときは摘出術によりこれらの機能障害を残すリスクが大きいため、ガンマナイフを選択することが多くなります。
開頭摘出手術を行う場合、手術のリスクを左右するのは周辺脳の機能の他に、摘出中あるいは摘出後の出血です。 脳動静脈奇形には勢いよく血流が流れ込んでいるため、これに関わる多くの動脈を急に閉塞、切断する摘出術では、いったん出血すると止血が困難であったり、行き場のなくなった血流が周辺の脳に充満し出血しやすい状態となることがあります。 こうした状態をなるべく緩和するため、しばしば摘出術前に血管内塞栓術を行います。 これは、脳動静脈奇形に流入する異常動脈をできるだけ血管内から詰めて閉塞する治療です。 このあとに摘出術を行うと、脳動静脈奇形に流入する血流の勢いが弱まっているために術中術後の出血の危険を減らすことができると考えられます。 小さな脳動静脈奇形では、血管内塞栓術だけで全体が閉塞し治癒することもまれにあります。 開頭摘出術の最大の利点は、手術が無事終わり1週間程度の周術期を問題なくすごせれば、脳動静脈奇形の治癒が得られることです。
ガンマナイフの問題点は、治療後、脳動静脈奇形がすぐに消失するわけではなく多くの場合、1年以上の時間を要することです。 また、放射線障害がおこる可能性も多少あります。 しかし、重要な脳の部位にあって手術が危険を伴う場合は大変重要な治療となります。
一方、ガンマナイフは直径3cm以上の大きな脳動静脈奇形には効かないことも多いことがわかっています。 重要な部位に存在し、しかも大きな脳動静脈奇形の場合は、手術もガンマナイフも施行せず、経過観察が選択されることもあります。

硬膜動静脈奇形

硬膜動静脈奇形 dural arteriovenous malformation (dural AVM) 、または 硬膜動静脈シャント dural arteriovenous shunt (dural AVS) 、硬膜動静脈瘻 dural arteriovenous fistulae (dural AVF) とは、高血圧以外の脳出血の原因の一つです。 頻繁に見かける疾患ではありませんが、痴呆の原因の一つでもあること、見逃すと増悪する可能性が高いこと、発見できれば治療により治癒できる可能性があることなどの点で重要な疾患です。

硬膜の動脈と静脈が硬膜内で何らかの原因で交通するようになり、血圧の高い動脈血がより圧の低い静脈に流れ込むことでおきます。 硬膜内の静脈には、脳の静脈が連絡しており、脳から心臓へ血液を帰す経路になっています。 硬膜動静脈奇形になると、硬膜内の静脈に短絡した動脈血は、脳に向かって逆流していきます。 したがって、本来脳から出て行くべき静脈血の行き場がなくなり、脳内で充血し、浮腫をおこしたり出血したりします。

症状や病態は発生する場所によりさまざまです。 最も多い海綿静脈洞部では脳だけでなく眼から流出する静脈も入っていますので、ここに動脈血が入り込むと眼やまぶたに逆流し腫れや充血をきたします。 脳の静脈に逆流すると前頭葉や側頭葉に浮腫や出血をおこすことがあります。 次に頻度が多いのは、横静脈洞からS状静脈洞部のものです。 これらの静脈洞には側頭葉などから太い静脈が流入していますので、ここに硬膜動静脈奇形が発生すると、これらの静脈に動脈血が勢いよく入り込んで脳浮腫、脳出血の原因になります。 硬膜は脳全体を覆う膜ですので、これら以外にもどこの部位にも発生する可能性があります。

<治療>
血管内手術と開頭手術とがあります
治療は、本来は異常な動脈と静脈および短絡部(奇形)を摘出ないし閉塞することですが、動脈は硬膜内全体に広がっており、短絡部は硬膜の中にあって通常見えません。 したがって短絡部とつながり動脈血を脳へ逆流させている静脈を閉塞することにより治療します。 血管の中から閉塞する場合と、開頭手術により閉塞する場合とがあります。

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