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脳卒中医療(頸部頸動脈狭窄症 治療選択)

1)代表的な症候性頸部頸動脈狭窄症に対するCEAのエビデンス

  • 北米50施設で1988年1月から開始されたNorth American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial (NASCET)が最も代表的。これは、過去120日以内にTIAまたは軽度の脳梗塞を起こし、患側頸部頸動脈狭窄が30~99%の患者さんを対象に最良の内科治療群と最良の内科治療+CEA群に無作為に分け、2群間での脳卒中の発生頻度を約2年間にわたり比較検討したものであります。ただ、CEAを行う外科医にはその手術リスクが6%以下でなければならないという条件が科せられました。結果として、1991年に70%以上の高度狭窄群では、脳卒中の発生率は内科群で26%であるのに対しCEA群では9%であり、合併症率の低い外科医がCEAを行う限り患側の脳卒中発生率を有意に減少させることが証明されました。さらに1998年には50~69%以下の中等度狭窄例においても有意差は小さいものCEA群が内科治療群より脳卒中の発症率を低下させることも証明されました。その後も長期成績に関して報告があり、CEA群は長期にわたって脳梗塞の予防効果があることが証明されてきました。
  • European Carotid Surgery Trial (ECST):欧州14か国の80センターで行われた大規模臨床試験。対象者は過去6ヶ月以内のTIAまたは軽度の脳梗塞を起こし、患側の頸動脈狭窄を有している患者さんでした。これもNASCET同様に、内科群とCEA群に分けその後の脳卒中の発症率の比較検討を行いました。まず、発症後約3年間においては70%以上の高度狭窄例においてCEA群は内科群に比べ有意に脳卒中の発症率を減少させていることがわかりました。その後の調査でも、80%以上の高度狭窄を有する患者さんには長期にわたりCEA群の方が脳卒中の発症を抑えることができることを証明しました。

2)代表的な無症候性頸部頸動脈狭窄症に対するCEAのエビデンス

  • symptomatic Carotid Atherosclerosis Study (ACAS);北米39施設において開始された大規模臨床試験です。対象は無症候性頸動脈狭窄症の方で、狭窄度は60%以上となっています。観察期間は約5年間。結果は、内科群での脳卒中発生率は11.0%であったのに対してCEA群では5.1%と無症候性病変に対してもCEAの有用性が証明されました。ただし、これを行う外科医の手術リスクは3%以下であることが条件となっています。
  • Asymptomatic Carotid Surgery Trial (ACST);30か国126施設で行われた大規模臨床試験です。約10年間かけて多数の症例数を登録しています。対象は無症候性の頸部頸動脈狭窄症で、頸部血管超音波検査で60%以上の狭窄を片側または両側に有する患者さんを対象としました。結果としては、脳卒中の発生率がCEA群で内科群に比べ有意に低く、従来女性に対してCEAは有効ではないとする報告が多い中、男性だけでなく女性に対してもCEAが有用であるとういうことを証明しました。

以上のような大規模臨床試験からCEAに関しては、症候性の場合は70%以上の高度狭窄例でCEAが有効、無症候性の場合では60%以上の狭窄でCEAが有効と言えます。しかし、CEAには外科医の手術手技的なリスクに関する条件が付けられています。症候性病変では6%以下、無症候性病変では3%以下のリスクでなければなりません。また、心疾患を始めとする他臓器疾患の合併や年齢などの全身麻酔のリスクもCEA手術のリスクを高める要因になります。このようにリスクが高いと予測される場合には、頸動脈ステントが用いられてきました。最近のステント手技の向上や材質・器機の発達により現在ではCEAと同等に近い周術期リスクで頸動脈ステントも行われています。しかし、頸動脈ステントにも考慮すべき治療リスクがあります。不安定プラークや高度の石灰化、強い血管の蛇行などがそれに該当します。現在のところ頸動脈ステントはCEAのような脳卒中の一次予防、二次予防に関する有益性やCEAに対する優位性は証明されていません。このために頸動脈ステントを考慮する場合は、最初にCEAの適応について検討し、上記の外科医の手術リスクを保証できないような例や全身麻酔のリスクが高い例などの高度リスク群に対して頸動脈ステント治療を考慮することが標準的治療選択法となっております。一方、CEAのリスクが高くない例においては、頸動脈ステント治療を考慮してもよいものの、十分な科学的根拠は不十分なのが現状です。

次に、現在まで報告されている頸動脈ステントの代表的な報告を示します。

3)代表的な頸動脈ステント留置術とCEAを比較したエビデンス

  • Stent and Angioplasty with Patients at High Risk for Endarterectomy (SAPPHIRE);外科的手術のリスクが高い条件を持ち、症候性狭窄例で50%以上狭窄、無症候性狭窄例で80%以上の頸部頸動脈狭窄症を有する患者さんを対象とし、307例の対象者を無作為にCEA群と頸動脈ステント群に分けて評価しました。その結果、360日間の死亡・脳卒中・心筋梗塞の発生率は頸動脈ステント群で12.1%、CEA群で20.5%で統計学的には同等の成績が得られ、CEAリスクが高い群に関しては、頸動脈ステント治療はCEAに劣らない短期および長期治療効果と安全性が証明されました。
  • Stent-Protected Angioplasty versus Carotid Endarterectomy in symptomatic patient (SPACE);外科的手術のリスクは高くない患者さんを対象に、症候性の頸動脈狭窄症に対して無作為にCEAと頸動脈ステントを選択して検討しました。その結果、30日後の死亡または同側の脳卒中の頻度は、頸動脈ステントが6.8%でCEAが6.4%と、頸動脈ステントはCEAに近い結果を出すことができましたが、統計学的には同等であることが証明できず、非劣性を示すことはできませんでした。ただし、この臨床研究で頸動脈ステントが行われた例のほとんどが、脳に血栓を飛ばさないようにするための道具が使われていない中での結果でした。
  • the Carotid Revascularization Endarterectomy versus Stenting Trial (CREST);現在、欧州と米国で行われた世界最大規模の無作為化比較試験。計2502例の症候性および無症候性の頸動脈狭窄に対して頸動脈ステントかCEAを無作為に割り付け、最長4年間にわたって追跡しました。2010年2月にその第一次解析の結果が報告され、30日以内における脳卒中もしくは心筋梗塞もしくは死亡、ならびに術後4年後までの同側脳卒中のいずれかの発生率は、頸動脈ステントが7.2%に対してCEAが6.8%であり、両者間に差は認められませんでした。また、周術期の総イベント発生率は差がありませんでしたが、その内訳を見ると、脳卒中は頸動脈ステントで多く、心筋梗塞はCEAに多く見られました。一方、比較的若年層では頸動脈ステントのほうが効果が高いのに対して、高齢の患者ではCEAのほうが効果が高いという結果でした。

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