
人を相手にする職業に就く人々は、困難な仕事であっても、人々や社会のために役に立ちたいという共通の志を持っています。看護師もそのひとりですが、超多忙、かつ理屈どおりに運ばないこともある医療現場の中で、自分自身を制御できなくなり、「毎日、慌しく業務に振り回されている」「これで看護をしていると言えるのだろうか」と感じている看護師が多いのではないかと気になっています。
看護は似たような体験をすることはあっても、同じ状況を体験することはありません。看護師には、患者さんやご家族の揺れ動く心理や感情・身体状況を察知し介入することが求められます。そこに、看護の深さや難しさがありますが、その介入で良かったか確証が持てないことが多く、その状況が続くと自信ややる気が低下することもあります。
私の若い頃には、患者さんのことを先輩や同僚と話す機会も多く、それは看護という仕事の意味を考えることにつながっていました。それにより、自分の看護介入を単なる経験として埋もれさせるだけでなく、次の経験に活かすことができていました。
現在のような超多忙な現場だからこそ、自分の経験に看護としての意味付けをし、気付きや学びを意識できる機会をつくることが必要だと考えます。看護への思いや考えを語り、仕事の意味をスタッフで共有できる仕組みづくりをしたいと思います。
日本看護協会では、看護職や患者さん、ご家族が経験した「忘れられない看護エピソード」を募集しています。平成23年度は1,490通の応募があり、看護職部門と一般部門の最優秀賞や優秀賞、入選のエピソードが公表されました。看護を通して得た、忘れることができない思い出やエピソードばかりで、感動し涙ぐむ内容のものもありました。
しかし、そこに描かれているのは特別な場面ではなく、日常の看護場面での、ごくありふれた出来事だと感じました。このエピソードを読むだけでも、私たちの仕事がいかに重要で価値があるのかが分かりました。
私たちは、いかに重要で価値のある仕事をしているのか。スタッフをその視点に立ち戻らせることが、看護部長に求められていると改めて感じています。
平成24年1月10日
香川県立中央病院看護部長 池田哲代